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2008/08/02 (土) 13:50
連載小説 プレリュード 第四話
連載小説 プレリュード
第四話
熱い。
私は狼狽(ろうばい)した。火を挟む前に当然、煙草は唇から離れるものと認識していたのだ。フィルターの紙が、乾いた上下の唇に張り付いていて取れない。口も開けない。咄嗟(とっさ)に、煙草を諦め、指を離すと、床へ目掛けて吹き付けた。しかし、それでも取れない。下唇にぶらりと垂れ下がった。唇の皮まで剥(む)けそうな気がしたが、無理やり剥(は)がすと、下唇に紙の一部が残った。