H君の話と、時速330kmで追いかけるパトカーについて
十数年前勤めていた会社の同期にH君という走り屋がいました。同じモータースポーツクラブのメンバー同士ということもあって、サーキットで競争したり、互いの彼女を連れ、ツルんでドライブに行ったりしたものですが、とても速い奴でした。
そんなH君が、東京と埼玉をつなぐ、とある幹線道路にて、右に左に車線変更をしながら追い越しを繰り返し走行していた時のことです。当時、彼が乗っていたのは、改造された初代カリーナED。昼間まだ交通量の多い時間でした。
ふと気がつくと、後方で赤色灯が回転しています。白バイでした。交通機動隊、走りのエリートです。赤色灯は回転しているものの、サイレンは鳴っていませんでしたので、彼はそのままのペースで、いやむしろペースを上げ、走り続けました。どうも本能的に振り切ろうとする癖があるようです。
しかし、白バイも、サイレンを鳴らさぬまま、グングン追い上げてきます。とうとう追いつかれ、少し広い路肩へと誘導されました。バイクに乗ったままのお巡りさんに、コンコンと運転席の窓を叩かれ、パワーウィンドウを下ろすと、お巡りさんが言いました。
「お前、速いな~。追いつかないかと思ったよ。」
「・・・・・・。」
「あんまり飛ばすんじゃないぞ!」
「はい。」
「じゃあな。」
それだけで、白バイは颯爽と走り去って行きました。爽やかな風を、H君の心に吹きたてながら。
なんとも、いい話ではありませんか。
という話を何故思い出したかと申しますと、時速330km以上でなければ逃げられない、最大出力560馬力のランボルギーニ・ガヤルドのパトカーがイタリアにはあるという記事を読んでのこと。
引用記事http://news.livedoor.com/trackback/3874883
この記事では、そのガヤルド・パトカーには、素早く移動出来るという特性を活かして、ドナーが提供した臓器を輸送するための冷却クーラーと心臓除細動器が車載されているということに感心しておりますが、そうだな、我が国のスポーツカーベースのパトカーにも、そのような機能があればいいのかもと、ちょっと気になりました。
NSX、フェアレディZ、スカイラインGT-R、インプレッサWRXなどのパトカーが存在するとのことですが、ただでさえ速いこれらのクルマに赤色灯とサイレンが付けば鬼に金棒。過去に、もしあと数分早ければ助かったのにというケースがあったのであれば、本来の使いみちとは異なりますが、イタリアのように医療に使ってもよいのでは。
ともあれ、お巡りさん頑張って下さい。新車営業スタッフ時代に、新車を購入して頂いた、あるお巡りさんの本音、「私達もね、ネズミ捕りとかね、捕まえると散散に文句を言われるんだけれど、捕まえたくて捕まえているんじゃないんだよ。」は、忘れません。捕まったドライバー自身の為、文句も言われ、嫌われ者となって、交通違反が重大な事故につながらないよう、戒めてくれているのです。本当はやさしいのです。
そして、たまにはH君の出会ったお巡りさんのように、多少、大目に見て下さいね。