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2008/08/08 (金) 21:59
連載小説 富士 第三話
連載小説 富士 第三話
忍野八海に着いた。八海を巡って逍遥する。今なお晴れて遠景に富士があればとも思ったが、もはや口吻を洩らさぬよう心がける。幸いここでは近景に集中できた。
水底まで見えるほど澄んだ池や流れが幾つかある。水面の波紋を追い、じっと水中の流れを探る。ふと、先刻の疑問が解けた。地の底から涌いてくる、冷ややかに澄んだ水。底に生えた水草が透明な流れに揺らいでいる。それが地上の景観より明瞭であり、非常に気持ちが好い。日常に疲れ雑然とした心を清閑とさせてくれるのだ。私は満足した。
季節の所為であろうか、以前の記憶よりもかなり濁っている池があったのには多少残念であった。