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2008/08/30 (土) 17:21
柔道の達人 小説編 第一話
M先生は、私の高校時代の恩師であり、過去に輝かしい経歴を持つ柔道の達人である。
M先生が一礼し、柔道場へ入ってくると同時に、始業のチャイムが鳴りだした。
太く短い首から生えた四角い頭を上下動させない「すり足」で、道場の上座にあたる位置へ素早く移動すると、生徒達のほうを向き、真面目な顔をして黙って立っている。
足は肩幅くらいに開かれており、柔道でいう「自然体」が保持されている。がっしりとした体格は、てこでも動きそうにないと思われるが、自然体のその姿は、素早く動き出しそうにも見え、端然と柔道の達人たる風格を披露し続けていた。
ふざけ合っていたり畳の上に寝転がっていた生徒達も、チャイムが鳴り終わる頃にはその存在を感知し、先生の前に整列し始める。体育の選択科目である柔道に対し積極性が無い者がほとんどである為、先生から距離を置き横長に2列となった。