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2009/07/04 (土) 06:20
連載小説 富士 第一話
連載小説 富士 第一話
紅や黄の枝葉のトンネルを潜りながら、友人 鎌田の車で富士の裾野へやって来た。紅葉狩りを兼ねて、富士五湖巡りをしようというのである。富士五湖へは、六年前の初夏にも来た事がある。強烈な陽射し、青々とした緑、そして何よりバックに聳える富士が大変印象的であった。
ところが生憎、今日は夜明け迄雨だったらしく、重そうに雲が立ち籠め、富士が望めない。しっとりとした紅葉も何処となく侘しい感じがして好いものだが、矢張りここに富士は必須である。そんな事からか、今、車窓にある眺めに、感興はさほど催されなかった。むしろ、記憶から彷彿される活力的な眩しい初夏と、眼前の静かにどんよりとした晩秋とのコントラストを、頭の中で楽しんでいた。